体験記

ニューサウスウェールズ大学 法科大学院
Master of Laws (LLM) 法学部 修士コース

2013年7月~現在

英語圏の中でも日本より比較的近く、また安全性も高いオーストラリアのニューサウスウェールズ(NSW)大学で、留学生として法律を学ぶ生活について、私の経験をお話したいと思います。

NSW大学のKensingtonキャンパスは、シドニーのビジネス中心街からバスで20分ほどのところに位置しています。通学は公共バスを利用していますが、本数も多く、どこに行くにも快適に利用できます。もちろん、キャンパス内の寮もありますし、自転車や車で通学している学生もいます。また、周辺にはボンダイビーチをはじめとしたいくつものビーチが連なっており、泳ぐこと以外にも、ランニングや自転車などで、一年を通して体を動かす学生が沢山います。

NSW大学のキャンパス内は、とても国際的な雰囲気です。各事務所、図書館、カフェ、書店、コンビニ等、どこへ行っても誰もが親切に、そして自然に、対応してくれます。多様な学生が集まっていることが、当然のこととしてキャンパス生活に溶け込んでいる、という印象です。

このような国際的な雰囲気は、授業にも反映されています。教授陣はオーストラリア人教員のみではなく、アメリカ、イギリス、南アフリカ、アジア、ヨーロッパ各国から集まっています。したがって、法学修士の科目はバラエティーに富んでおり、オーストラリア法は当然のこと、WTO法や、テロ、難民等国際法上のさまざまな総論や各論、さらにはアメリカ競争法とIP、EU経済法といった海外の先端法分野を、オーストラリアにいながらにして学ぶこともできます。授業はオーストラリア人と机を並べるわけですが、先生方は初回に学生の自己紹介の時間を設け、皆でそれぞれのバックグラウンドを把握しあいますし、必ずしも全員が法律出身者でないなど学生も多様な中で、英語のハンディキャップはある一側面でしかありません。学生同士でのグループディスカッションやプレゼンテーション等を通じて、全員が授業に参加できる雰囲気作りがなされています。

NSW大学の法学部は、留学生に対するケアがとても手厚いと日々感じています。

まず、LLMコースの大陸法圏からの留学生に対しては、オーストラリアの法制度の概論クラスの履修が週一回義務付けられています。この15名ほどのクラスを通じて、オーストラリアの基本的な法知識および判例法および連邦制独自の考え方をインプットできるだけでなく、プレゼンテーションやエッセイの書き方、文献の探し方等、他のクラスで必要となるテクニックも習得できます。

また、州議会見学や裁判傍聴、そして裁判官を直接訪問し、話をするという貴重な機会もありました。さらには、同じ境遇の留学生が週一回このクラスで顔を合わせることになるので、留学生同士の情報交換や相談の場となり、お互い大変仲良くなります。法律英語を事前に勉強しておきたい場合は、本コースが始まる前に、NSW大学附属の語学学校で、法律英語の専門クラスを履修するという選択肢もあります。

加えて、学部、法科大学院、法学修士、法学博士のすべてのコースの留学生に対し、定期的にお茶会が開かれ、国際担当の先生やスタッフとカジュアルな形式で直接話をできる機会が用意されています。このようなイベントはお茶会のみに留まらず、オーストラリアンフードや小動物と触れ合えるイベントや、アイスクリームが振舞われる会など、常に気軽に楽しく参加できる形式になっています。また試験前には、試験のいろはから、困ったときの対応法についてわかりやすくまとめたメールが留学生に送られてきます。

このように、留学生をサポートしてくれる担当の先生、スタッフと定期的にコミュニケーションをとれるという環境は、安心して学生生活を送り、最終的には留学を成功させるための大切な要素だと感じています。

私が所属するLLMコースの学生の多くは、実務家であるパートタイム学生のオーストラリア人、およびスイスをはじめとするヨーロッパやアフリカ、およびアジアからの弁護士、公務員、新卒等の留学生から構成されています。日本人は去年、今年と1年に1人ずつです。

また、オーストラリアには、日本のように、法学部と法科大学院が並存し、NSW大学の法科大学院は2年、または3年制で、前期、後期のいずれのセメスターからでもスタートできます。ここにもアジア各国やイギリス、アメリカ等からの留学生がおり、各セメスターに1人の割合で、日本人留学生が、アジアまたは国際舞台での活躍を目指して勉学に励んでいます。

こちらの留学生の意見として頻繁に耳にすることですが、NSW大学は、志願書類を提出後、合否の返信が迅速だという印象です。私も留学に当たりMECの山下さんやスタッフの方々のお力をお借りし大変感謝しておりますが、なにかと不安になりがちな留学準備も、NSW大学の場合はとてもスムーズだったことも利点の一つとして付け加えておきたいと思います。

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2004年4月 慶応義塾大学 環境情報学部 入学
2008年3月 慶応義塾大学 環境情報学部 卒業
2008年4月 アメリカンファミリー生命保険会社 入社
2010年12月 アメリカンファミリー生命保険会社 退社
2011年2月 ニューサウスウェールズ大学付属語学学校 入学
2011年7月 ニューサウスウェールズ大学大学院 広報・広告修士コース 入学
2012年8月 ニューサウスウェールズ大学大学院 卒業
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私はこれまで神奈川県で生まれ育ち、一度も生活環境を変えた経験がなかったため、これまでとは別の環境に身を置き、全く異なる環境で生活してきた人たちと交流することで、自分が生活してきた環境や続けてきた考え方を一度客観的に見つめたいと考えました。また私は、留学中に出会うバックグラウンドの全く異なる人たちが、いま何を考え、どういった生活や日常的な習慣を続けているのか、ということを実体験を通して知りたいと考えていたため、ある程度の期間、決まったメンバーと、同じ環境下で一緒に生活ができるような留学形態と選びたいと思いました。そのような理由から、できるだけ国籍の多様性のある場所で、出会った人たちと長期的な人間関係を築けるような環境に出ようと考え、オーストラリアのシドニー、そして国際性が評価されているUNSWで、学生として留学をすることに決めました。

シドニーに到着してからまず通い始めたのが、大学院での勉強に必要な語学力を身につける付属の語学学校でした。ここには平日毎日通い、決められた時間割に基づき17?18人のクラスで授業を受けます。Writing, Reading, Listening, Grammar, Presentation, Discussion等の授業がありあましたが、特にWritingについては、アカデミックなエッセイに必要な表現やルール、文献の使い方などを学び、入学前これらは基本的な知識すらなかったので非常に助けとなりました。また10週間のあいだ、毎日顔を合わせるクラスメイトがいたおかげで、お互いに良い影響や刺激を与えながらスキルアップができ、コース終了時には強い連帯感が生まれました。私はこの語学学校で10週×2コースを受講しましたが、このコースでの多くの試験をパスしないと大学院への入学ができないというプレッシャーが常にあり、それが語学力アップにつながったと感じています。

大学院に入学してからは、Public Relation & Advertisingという修士コースに在籍し、週に4コースを受講していました。だいたい1つのコースで3~4つほどの課題が出されるため、毎週何かの課題に追われており、内容は、単独でのエッセイやプレゼンの他、ペアワーク、グループワークなども多く、また私はアート系のキャンパスであるCOFAでの授業も受講していたため、グループでの映像制作等も行いました。

UNSWは留学生が半分以上を占めるため、課題についてのアドバイスがもらえるLearning Centreという機関があり、エッセイのチェックのために頻繁に利用をしていました。それでも実際は英語面でのハンデがネイティブよりあったため、内容やアイディアが評価されたことでネイティブよりも課題で高得点を得られたことは、達成感を一番感じることができた瞬間でした。
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大学内には様々なクラブや団体があり、大学内の敷地でも頻繁にイベント等が行われています。その中で私が興味をもったのが、ウィンドサーフィン&セーリングクラブでした。もともと留学前からセーリング競技に興味をもっていたこともあり、このクラブの存在を知ったことをきっかけにクラブのレッスンに参加をしてみました。ウィンドサーフィンと聞くと、特別な道具が必要であったり、またその操作も難しく、敷居が高いように思えますが、クラブでは初心者のための無料レッスンを設けており、道具の貸出しやゲレンデまでの送迎もしてくれたため、全くの初心者でも気軽に参加することができました。私はシドニー国際空港の近くにあるBotany Bayでのレッスンに参加し、クラブを運営しいている学生に教えていただきました。この体験をきっかけに、留学から帰国後も日本でウィンドサーフィンを続けています。

現地での滞在については、語学学校在学中にホームステイ、大学院入学後は大学寮での生活を送っていました。ホームステイでは、Maroubraという地区のビーチすぐ近くに住む、年配のアイルランド人女性の自宅でお世話になりました。世話好きで話し好きな、ヨーロッパ人特有のユーモアをもつ方で、5ヶ月間のうちほとんどの間は二人暮らしでしたが、その方の子供家族、友達の方にも頻繁にお会いできたことで、交流の幅も広がり、また英語習得の面でも役に立ったと思います。

その後、大学院入学と同時に大学敷地内の寮に移りました。私が入寮したInternational Houseという寮は、国籍の多様性をコンセプトとしていたため、授業やクラブ活動だけではなかなか出会えない国籍の学生とも生活をともにできる、とても貴重な機会を得られたと思います。また寮内では学生達の交流を促すアクティビティが多く、最も印象的だったStudy Breakという活動では、毎週自分の国の文化や習慣をプレゼンテーションと食事を通して紹介する、というチャンスに恵まれました。ここでは、一般的なガイドブックやインターネット検索などでは得られない、同じ世代の友達の目線によって集められた日常を紹介し合うことができ、私の今回の留学の目的の一つが叶えられたように思います。

留学中、語学学校・大学・寮生活などを通して、期待していた以上に多様な国籍や人種の方々とともに生活をすることができ、日本での生活ではなかなか体験することのできない貴重な1年半を過ごせたと思います。そうした環境の中で自然と、私のこれまでの生活や物事の考え方を見直す、という目的も遂げられたように感じます。特に、現地の生活では、私が日本国籍であるというだけで優遇されることも少なくなく、日本国籍の力や日本人であることのありがたみに気づけたことは、自分の考え方に大きな変化をもたらした体験だったと思います。

留学の形態は進学、ワーホリ、就職など様々ですが、私は大学院への進学をしたことで、知り合った友人たちと同じ目標に向かいながら、時間をかけて付き合えたと同時に、留学後もその関係を続けていけていることが大きな財産となっています。留学はそれまでもっていた考えを見直したり改める、本当に貴重な機会だと思います。日本人にとって留学は、学生にとっても社会人にとってもまだまだハードルが高いと思いますが、私は実際に留学をしてみて、ぜひもっと多くの方に海外に出てほしいと思いました。海外には、日本国内にいるだけでは気づけない、知るべきことがたくさんあるように感じます。

留学は、滞在先の国や地域、留学の形態、現地での生活の仕方などでそれぞれ得られるものも異なってくると思うので、これから留学を考える方は、目的とそれが叶えられる留学先を考えながら選び出すことが大切だと思います。
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語学学校ではIAEから入学して、クラスには日本人がただ一人で、最初はとても心細かったですが、クラスメートはとても親しみやすいメンバーであったので、学校は毎日楽しかったです。しかし、最初は勉強が苦しくて、ついていくだけが必死だったので、日本の友達がいたら勉強についてアドバイスや相談をしたいと思っていました。でも、1年間クラスに日本人が僕だけという環境で過ごしていたので、各国の文化や考え方により触れ合うことができ、国際的な社会勉強ができたように思います。

ファンデーションコースでは、Art and social science courseに進み、Academic English Australian studies, International issues  perspective, Math, computing studies の科目を受けています。Academic English では、語学学校の時から習ってきた延長線上ですが、より多くの語彙力が要求されます。どの教科も理解をするのに相当な時間がかかってしまいます。なかでもMathでは、特定の単語を覚える必要があり、文章問題では、たくさんの誤解をしてしまい、最初は大変でした。しかし、クラスメートや語学学校からの友人たちが手を差し伸べてくれたことで、問題が解けるようになりました。International issues and perspectiveでの科目は今世界で何が起きているか、将来、何が起きるかなど、一つの問題に対して、どうしたら解決ができるかというものでした。 インターネットを使い検索し、見つけた記事を読み理解をして、それから自分なりの解決方法を生み出す創造力が試されるものです。日本では、あまり経験がない授業内容だけにまだまだ悪戦苦闘の日々が続きそうです。